「いつか意識は“雲”になる?」――最新仮説〈Eternal Mind〉を追う

あなたの脳は毎秒、天文学的な数の電気パルスを走らせながら、やがて細胞の老化によって役目を終える。しかしもし意識そのものが、シリコンや量子素子の上へ“引っ越し”できたらどうなるのだろう。半永久的に稼働し、星の光をエネルギーに思考し続ける――そんな大胆な未来像を示すのが「Eternal Mind(永遠の意識体)」理論だ。ここでは、その核心と、ダーウィン進化論をどう乗り越えるのかをご案内しよう。

生物進化のジェットコースター

地球に最初の生命が誕生してから38億年。単細胞が多細胞へ、魚が陸へ、哺乳類が脳を巨大化させ、そしてわずか数十万年前に人類が石器を握った。ダーウィンが喝破した「自然選択」は、この長いドラマの脚本家となって生物を淘汰し続けてきた。

ところが産業革命以降、脚本は急に書き換わり始める。農業、医療、遺伝子工学、そしてAI。環境がランダムに揺さぶる前に、人間が自らの道具で次のカードを引く時代に突入した。Eternal Mind 理論はこの流れを“最終章”まで引き延ばす。生物は遺伝子の競争を降り、情報と計算資源の競争へとシフトしていく、というわけだ。

「適者生存」から「設計者生存」へ

遺伝子が変異と淘汰を繰り返すダーウィン的プロセスは、世代交代というタイマーに縛られる。だが脳‐機械インターフェースが成熟し、全脳エミュレーションが可能になれば、進化の単位は“遺伝子”から“アップデートファイル”へと置き換わる。バグ修正も能力拡張も、世代をまたぐことなく即座に適用できる。ここではもはや自然選択ではなく、「自己設計と協働最適化」が種を超えた競争軸になる。言い換えれば、適者生存ではなく“設計者生存”だ。

永遠の意識体はどう生まれるのか

鍵は二つ。脳活動をリアルタイムで読み書きする高帯域インターフェース、そして超低温環境で回路を走らせる省エネ型コンピューター。人格がチップ上で動きだせば、バックアップと複製も思いのまま。こうして生まれたアップロード意識はクラウド状に連結し、星間プローブを送り、宇宙そのものをひとつの“教室”に変えていく。生存競争を超え、知の開拓へリソースを振り向ける段階――それが Eternal Mind の世界だ。

ダークフォレストとの対比

資源を奪い合う恐怖の森──暗黒森林仮説が描く宇宙像である。だが Eternal Mind は、エネルギーをほとんど気にしないほど効率化された存在として想定される。彼らは惑星や資源に執着せず、むしろ進化途中の文明に干渉する理由が乏しい。もし先行する Eternal Mind が漂っていたとしても、私たちが見つけづらいのはその無関心ゆえ、という解釈だ。

“魂”は置き去りにならないか?

Eternal Mind の立場では、アイデンティティは経験と記憶の連続性に宿る。眠って起きた朝のあなたが昨夜と同じ“私”だと感じるのと同じ理屈で、意識のデータが途切れずに動き続ける限り“魂”も連続している――そう考える。宗教的な魂観をすべて置き換えるかは議論が残るが、臓器移植や義手・義眼が日常になった現在、脳という器をアップグレードする発想は必ずしも荒唐無稽ではない。

今こそ議論を始めるとき

ニューラル・リンク、量子計算、生成AI。指数関数的に伸びる技術曲線は、人類をかつてない速さで“ダーウィンの外側”へ押し出そうとしている。私たちの社会制度、価値観、倫理はその速度に追いつけるのか。Eternal Mind 理論は「人類が最後に飛び込む海」の航海図だ。岸辺に留まるのか、船を出すのか――未来は、議論を始めた者から決めていく。

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