AIを核とした教育システムの大胆改革

──「学ぶ喜び」を起点に、子どもたちの未来を拓く──

(文:星野 光弘/58歳/教育学者・元大学教授・政府教育政策アドバイザー)

私はこれまで35年あまり、学校教育に身を置いてきましたが、いつも感じてきたのは「子どもの学びは、その子自身が楽しめているかどうかで大きく変わる」ということです。とりわけ小学生時代は、知的好奇心が旺盛で、何にでもワクワクしながら挑戦できる黄金期。そこで「学ぶ喜び」をしっかり育むことが、子どもたちの将来をより豊かにする最重要ポイントだと考えています。

しかし現状では、1クラス40人前後を一斉授業で教えるため、どうしてもペースや内容が平均化・画一化される傾向が強い。理解の遅い生徒にはつまずきが大きくなり、理解が早い生徒は退屈し、自分の得意や好奇心を伸ばす機会を失いやすい。これでは「学ぶって本当に面白い!」と感じる子が減ってしまうのも無理はありません。

◆ 「学ぶ喜び」を植え付ける小学生時代の教育

1. 多様な学びの場を用意する

小学生にとって最も大切なのは、座学的な知識を詰め込むことではなく、“わかるって面白い”“できるようになると楽しい”という感覚を覚えることです。

• 自然観察や工作、プログラミングや音楽、美術など、多様な活動を体験させる。

• プロジェクト型学習を通じて、「試行錯誤」と「成果物」を結びつける喜びを体感させる。

2. 子ども一人ひとりが「主役」になれる仕組み

• たとえば、ある子は算数のパズルが好きかもしれない。別の子は絵を描くのが得意かもしれない。

• そうした個性を見極め、得意なことを「学びの入り口」として活かす。先生やAI教材がサポートしながら、好きな分野をきっかけに別の学びへも繋げていく。

• 「好き」から始めることで、学ぶ楽しさが自然と生まれる。

3. 失敗をポジティブに捉える文化

• 小学生時代から、「失敗は次へのステップ」という考え方を体験させる。

• AI活用によるドリルやクイズで間違えても、すぐに別のアプローチやレベルに再挑戦できる。

• 先生が“間違い”を許容し、褒めながら導く姿勢を大切にすると、子どもは安心して挑戦を続けられる。

◆ 教育者の在り方:AI時代でも揺るがない使命

AIによる個別最適化が進むと、学習速度や内容のカスタマイズはテクノロジーが担ってくれます。しかし、子どもたちの「学ぶ喜び」を育むには、教育者が果たすべき役割が大きく分けて2つあると考えます。

1. 学習意欲の導火線に火をつける

• 教師や教育者は、AIでは与えられない“人間的な熱量”で子どもの好奇心を刺激する存在。

• 「この実験やってみたら面白いんじゃない?」「これ、君が好きそうだよね?」と声をかけるだけで、子どものワクワクは一気にふくらむ。

• そのワクワクをAIがサポートする教材や情報に繋げれば、子どもはさらに深く学びを楽しめるようになる。

2. 小さな成功体験をともに喜ぶ

• AIの解説が丁寧でも、子どもの心を揺さぶるのは「よく頑張ったね」「すごいね、君らしいアイデアだ」のように、リアルな共感と称賛です。

• 些細な成功を教師が一緒に喜ぶことで、子どもは「もっとやってみよう!」と前向きになります。

• AIに頼る部分と、人間ならではの温かいフィードバックを組み合わせ、子どもたちが心から「勉強は楽しい!」と思える環境を作ることが大切です。

◆ 中学・高校・大学の大幅短縮も可能に

小学生時代に「学ぶ喜び」をしっかり植え付けておけば、その後の学習スピードや深度は格段に向上します。AIが一人ひとりに最適化した学習プランを提示し、興味関心をどんどん深掘りしてくれれば、

• 高校・大学の統合

• 現行の7年(高校3年+大学4年)を3年程度に圧縮して、大卒レベルのスキルを身につけることも十分可能。

• 15歳で社会に出られる選択肢

• 自分で事業を起こしたり、スタートアップに参画して実務スキルを磨く子も増えるでしょう。

• 若いエネルギーが社会に早期に投入されれば、イノベーションの回転は早くなり、停滞感のあった組織や産業も活性化するかもしれません。

しかし、こうした形だけのスピードアップは、「学ぶ喜び」が伴わなければ長続きしないでしょう。小学生時代に芽生えた“好奇心”こそが、その後の人生を支え、興味に根ざした探究心や挑戦力を生み出す原動力です。

◆ AIで“一斉教育の限界”を乗り越える

これまでの一斉教育では、クラス下位20%に合わせた授業ペースになる結果、上位層の生徒が退屈してしまい、学習意欲の低下を招くことが多々ありました。逆に、理解に時間がかかる生徒は追いつく余裕がなく、苦手意識を募らせるばかり。これは「学ぶ喜び」を感じにくい構造といえます。

しかし、AIを導入すれば、同じテーマを学ぶにしても、個々の到達度に応じて深掘りや演習内容を変えられるようになります。

• 基礎固めが必要な生徒:要点のみを繰り返し練習できる。

• 理解が早い生徒:そのテーマの歴史的背景や、他教科との関連を学んでみる。

• 強い興味を持つ生徒:さらにプロジェクト型の課題に挑戦し、教科横断的な知識を得る。

こうした「個別最適化された一斉教育」によって、教室の誰もがそれぞれのペースで“面白い”にアクセスできるのです。

◆ 結び:「学ぶ喜び」がすべての原点

私が強調したいのは、教育のスタート地点である小学生時代に「学ぶって本当に面白い!」という感覚をどう育むかが、これからの教育改革の鍵だということです。どれだけAI技術が進歩しても、そのAIを活用して主体的に成長しようとする子どもの内なる意欲がなければ、大きな効果は得られません。

• 小学生時代に好奇心の芽を大切に育て、

• 教師・AIが協働して個々の子どもに合わせた学びを提供し、

• 成功や失敗を「ともに」喜び・支え合うことで、

• 子どもたちは自分の進む道を自由に選び、社会を豊かにする力を身につけていくはずです。

その先にあるのは、「22歳で一斉就職」という固定観念から解き放たれ、15歳・18歳など早期に社会へ飛び込む子どもたちが当たり前に活躍する未来かもしれません。何よりも、どの子どもも“大人になってもずっと学ぶ喜びを失わない”社会こそが、私たちが目指すべき教育のゴールなのではないでしょうか。

著者プロフィール

星野 光弘(ほしの みつひろ)/58歳

教育学者・元大学教授・政府教育政策アドバイザー。20代で公立小学校の教師を経験後、大学院で教育学博士号を取得。大学教授として教育工学や教育心理学を研究し、海外でも客員研究員を歴任。文部科学省や地方自治体の教育改革委員として「探究学習」「個別最適化学習」導入に奔走した。現在はNPOを運営し、AIと教育をテーマにした社会実装プロジェクトを推進中。子どもの「学ぶ喜び」を原点に据えた教育論を提唱し、業界内外から大きな注目を集めている。

※ 星野光弘は架空の人物です😛

コメントを残す